2014年1月22日水曜日

生保の多面性

生保叩きのニュースは多いのですが、叩いているニュースソースの主体がどこから来ているのかという事に関する考察は慎重でなければならないと私は常々考えています。

特に、不景気の時代と高齢化時代が到来することで食にあぶれたある一定年令以上の層、または一定レベル以下の教育しか受けられなかった人達、そして病を得て仕事を辞さざるを得なかった人たちを中心に「失業」という形での皺寄せが来るということは現実問題として避けられないことですから、その人達がどう頑張ろうと生活を得る糧がなく生きていく術がないときには、少なくとも文明国と呼ばれる国では、生活保護もしくはそれに準じたシステムがその人達のもとで発動し、その人達の最低限の生活を保証すべくその歯車が回り始めるのがあるべき姿だと考えています。

実際、病院勤めをし始めてよく見えてきた現実の世界は、生活保護を受けている人々の個人としての生きていく上での苦闘の歴史です。それぞれの患者さんからお話を伺ったり、カルテに貼付してある生活保護課からの連絡表、そして他の病院からの看護記録などを見ていくと実に多くの方々が実は一生懸命自分の能力なりに仕事をしてきて、病を得て入院して居るという状況。
若い頃は仕事をいくつも掛け持ちして働いたり、全国を転々としてビルの建築現場や大工として仕事をし続けて、最後に怪我や病気、そして高齢化して入院。

結婚もせず、家族もおらずという方も比較的多くおられ、仕事をするにも高齢で断られたりすることで結局は高架や橋の下に住むという日々を送らざるを得なかった人を誰が非難することが出来るのか、私にはちょっと理解できません。
人間、全ての人間がハイレベルの企業や官公庁に入って福利厚生もバッチシの生活を送り家族も子供も皆健康と言う状況を過ごせるわけではありません。当然の如く、社会の中では努力、能力や運その他の多くの有象無象の要素によって多くの経済的な格差を持った多段階の層を形成しているわけで、とてもではないけれども、そのままでは人間らしい生活を出来ない一群の人達が「絶対に」出てくるのが社会の当然の枠組みだと思います。

原始時代ならともかく、21世紀の文明国では出来るだけ最大多数の人達が「悲惨な目」にあわないように、持てるものが持たざるものにそのお金を使う形で皆が支えあうというのがあるべき社会。無論、努力しない人間、ダメ人間も助けられる中には沢山いるのでしょうが、その部分を拡大視し過ぎると保護の本当に必要な人を含めての全体バッシングがたちどころに湧き上がり、冷静な議論ができないところで不毛な叩き合いが始まるような気がします。

五体満足なのに働こうとしない「ダメ人間」と世間一般で言われるような人達も含めて、何故そういった人達も基本的には排除せずにセーフティーネットと言うのは準備されないといけないのかということを真剣に考えるこの頃。
我々の住む日本は世界で最も成功した社会主義国家等と揶揄されることもありますが、少子高齢化社会を迎えても、医療費削減が入っても、これほどまでに国家や自治体が個人の万一の事態に対する面倒を見てくれる国は他にはないんじゃないかなと根拠なく思っているんですがどんなもんなんでしょう。

働ける人が働いて、働けない人間を助けるというのは無宗教を自認する私にとっても崇高なイベントだと思うんですが。
マスゴミが喧伝する不心得者達が「確かに」居るにしても、「おにぎり食べたい」といって餓死するような人をこの日本で出さないようにするシステムに私は自分のお金を使いたいと思います。受給者の中には不心得者がいて、その人達が使うお金がたとえ私が払う税金の中から一部出されているのであっても、、、。

アメリカにいた時その発想の根源を理解できたのは、生活保護のシステムというのは個人というのが家族とも切り離された、独立した存在としての「尊厳ある一人」として考慮されていて、家族が億万長者だろうが、その人達から縁を切られているか否かにかかわらず、その人自身が援助を申請する資格を満たしていれば助けてもらえる、というものでした。

生保を受給している人達を税金泥棒呼ばわりするのは簡単ですが、個々の案件をよくよく吟味していくと多くの場合はマスゴミが取り上げるような事例ではないことが判ると私は考えています。
生保の受給資格の検討の更なる法的要件の考察を続けるのは当然のことですが、助けるべき人達を助けることができなくなるような形でのシステムの変更は日本、ひいては日本人にとって将来的に荒んだ社会を出現させるような気がします。
日本人の高齢化もある時期を超えたら安定した年齢構成比率を持った国になると思いますし、そのような時期まで、日本がこの生活保護のシステムを持っていても国が倒れるようなことはないと私は考えています。

とは言え、削減の波は押し寄せるんでしょうね。。。

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