2013年6月26日水曜日

論文と追試

最近のデータ捏造、論文捏造の話がネットや各種メディアを賑わせていることはサイエンスの世界に関連する人なら誰でも「イヤというほど」承知している事でしょうが、実際に研究に従事していると最近流行りの写真の使い回しとフォトショップによる写真の合成、ノイズの消去等以外にももっと深刻で根源的な昔ながらの捏造のスタイルというのが見逃されているような気がします。
ここで私が言っている捏造というのはやはり確信犯的な捏造ではあるのですが、イメージやグラフ、組織の写真等は「あたかも」自分が論文内で解説しているように整合性をもったものが列挙してあるのですが、それらが全て「そう見えるサンプル」を整然と配置したものである場合のものです。
私はこの手の「詐欺的データ」を造る人間の話を間接的に聞いたことがあります。五年ほど前にもちょこっと書いたんですが、ヨードを持ち込んで暗室でスポットを作り出すCellを連発するチャイニーズ・マジシャンの話などはその代表例です。
インパクトファクターの高い雑誌に出された「間違いなくその世界にとって重要であるはずの論文」であるにもかかわらず、何故か引用されない論文なんていくらでもあります。その引用されないというパターンにもいくつかあるとは思うんですが、余りにもオオ~!ということで皆が夜通しかけて追試をしてみたにもかかわらず「何故か再現性が無い」というのもそのパターンの一つだと思うんです。
ある特定の細胞を使って特定の条件においた時にのみ発生する生物学的イベントというのも当然世の中にはあって、それがまた大切な事実であることもよくあるのですが、どんな方法を使っても再現できないSet upと呼ぶべき実験?もあるから厄介です。
勿論、こんな場合の実験結果というのは人の目のあるところでは論文書いた本人もその結果を再現できないのですから完全な詐欺なのですが、世の中には碌でもない奴が居るもので、実際に実力者のラボにポスドクとしてやって来て全力でこういった詐欺行為を働いていわゆる「大きな論文」を書いて、外部にポジションを獲得した挙句さなぎの脱皮のように出て行くのです。
倫理はどこに?と聞かれてもこの手の人間にはそんなもの欠片もないのですから非常に困ります。実際私こういう人間が居たのを前のラボの現場で見ていたことがありますので紛うことなき事実です。
これで困るのは論文になってリトラクトもされずに槍玉にも上がらず検索対象としてヒットし、他の研究者の貴重な時間と多大な労力を「無駄」にしてしまうという事実です。読むだけでも無駄なのに、実験までさせられそれが数ヶ月続くことも当然あるのですから!こんなことをする屑がどうなろうと私は構わないのですが、そこで作られたデータを今後の自分の研究に使うにはその整合性に破綻を来さないために捏造を続けるようにそのラボ全体がロックインされてしまうことです。(ホイッスル吹いてやろうかな?)
デカイ論文に載って、数年の内に奇妙なほど引用されなくなっている論文があったら、その論文にはもしかするとサイエンスの世界で妙な噂がつきまとっているかもしれません、、、。
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